1999年9月20日執筆

進まない耐震補強

 「新耐震」以前に建てられた建物は全国に約2400万棟あり、そのうち約6割の1400万棟は耐震性に問題があると推定されている。

 これら建物の耐震強化をはかるために、95年末、「耐震改修促進法」が施行された。この法律によって、住宅の耐震補強をする際、住宅金融公庫から年率3.1%の低利融資が受けられる。

 東京都は、この融資制度の利用で老朽住宅の改築を一気に進めようと、さらに利子の1%を補助することにした。95、96両年度で延べ2千棟、72億円の融資利用があると見込こんだ。しかし、耐震改修促進法の施行から1年が経過しても、申請は一件もなかった。耐震補強には数百万円もかかってしまうため、危険だとわかってもでは簡単に改修できないのが実状だ。補助金制度など、もっと踏み込んだ政策が必要だろう。

 ここ近年の不況により歳入が減少しているので、行政機関は緊縮財政を強いられている。それでも「震災対策」の予算は特別扱いで通過している。これにより、高速道路・橋脚の補強や震災拠点となる建物の改修は順次進められている。それと比較すると民間には低利融資しか対策がとられていない。依然として、民間住宅の耐震強化は大きな遅れをとっている。

基準以下の新築住宅

 また、「新耐震基準」以降に建てられた建築物が安全であるとは言い切れない。新しくても、建築基準法通りの耐震構造になっているとは限らないからだ。

 住宅が完成すると、建て主が役所に届けを申請して完了検査をしてもらうことになっている。建築基準法が守られているかどうかは、この完了検査で確認されることになる。ただし、届けを出さない場合が多いことから、実際には検査が行われないことが多い。受けなくても罰則規定はない。検査を受けているのは2階建て以下の住宅など場合で、東京23区が15%、大阪市が10%(いずれも95年度)、全国平均でも3割ほどだ。検査そのものも、建ぺい率や高さ制限を見るのが精いっぱいで、施工不良など構造欠陥までは調べきれてない。「建築基準法を守っている方がよほど少ないのではないか」と言う専門家もいるぐらいだ。

 実際、阪神大震災の建物調査によると、81年以降の建物の14%が中破以上の被害を被り、3%が倒壊している(表2参照)。建物がより新しいことを考慮すると、新耐震以前の72年から81年に建てられた建物の被害状況と大きな違いがない。


アメリカの充実した建築検査制度

 一方、アメリカでは、「住宅の建築検査・監視」の制度が充実している。

 まず、建築に際しては、詳細な設計図面が作られ、行政担当者はそれが建築法規に合致しているかを入念にチェックする。合致していない限り着工を許可しない。許可が出され施工に入ると、今度は、施工が設計図通りかどうかを市の検査士が現場に何度も行って検査する。大きなビルはもちろん、普通の住宅でも、建築途中に6回から8回も調査している。違反があると、再度の検査をパスするまで次の段階に進めないうえ、罰金の制裁がある。

 94年1月17日にロサンゼルス市はマグニチュード6.7の直下型地震を経験している。市全15区のうち、ノースリッジを含む第12区では約2万1千棟の建物が損害を受けた。しかし、住宅がしっかりしていたことが幸いし、地震直後の検査では、立ち入り禁止の「赤シール」はわずか146棟。安全を意味する「緑シール」が94%だった。

 ロサンゼルス(人口350万人)の市建築安全局は職員が850人もいて、うち450人が検査官だ。地震で被害を受た後、住宅検査制度を一層充実させていた。対して大阪市(同260万人)では、検査官は21人しかいない。

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2005,7, 3
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