付録2 兵庫県知事宛申し入れ書

2000年 1月17日

兵庫県知事 貝原俊民殿

住宅復興市民委員会
代表 岸本幸臣(大阪教育大学教授)
TEL/FAX 078-682-9045 

住宅復興のための要求課題

 私達、住宅復興市民委員会は、阪神・淡路大震災の被災地における「住まい」の一日も早い再生を願って、被災者の立場から住宅復興の現状を点検し、問題点や改善課題について提言する活動に取り組んできています。

 震災5周年を迎え、これまでの活動の成果を整理し、住宅復興がいまだ道半ばであるとの認識を深めるとともに、次の段階の住宅復興のための対策と震災からの教訓として、被災都市の行政として、以下の諸要求に緊急に取り組まれるよう要望します。

1.被災住宅「戸数」の確定作業の実施

 阪神・淡路大震災による住宅被災については、全半壊棟数249,178棟(全壊104,906棟 + 半壊 144,272棟)と公表されている。しかし戸数レベルの実数値は、震災から5年が経過した今日もなお発表されていない。

 史上稀にみる被災を出した大都市直下型地震の住宅被災の正確な実態を把握することは、次の世代に継承するためにも、学術的に記録に留めるためにも、また何よりも「住宅復興計画」の積算根拠の妥当性を検証するためにも、戸数レベルの被災実態は明らかにされる必要がある。
【住宅復興市民委員会推定結果:全壊19.9万戸+半壊26.3万戸=合計46.2万戸】

2.「ひょうご住宅復興3ヵ年計画」の復興必要戸数の積算根拠の開示

 兵庫県では、震災で壊滅的被災を被った住宅の早急な復興を図るため、「ひょうご住宅復興3ヵ年計画」(平成7年3月9日)を策定し12.5万戸の新規住宅の供給が必要とされ、戸数レベルでは目標戸数を超過達成している。しかし、全半壊世帯数457,965(全壊世帯181,799+半壊世帯276,176)という実態からは、必要供給戸数の妥当性が疑問視されている。

 住宅復興の達成状況を判断する上で、必要供給戸数がなぜ12.5万戸であったのかは重要な判断基準となるので、行政はその積算根拠を明らかにする必要がある。
【住宅復興市民委員会推定結果:33.1万戸(全壊戸数×1+半壊戸数×1/2)】

3.被災地区内の新規供給住宅の被災者入居状況調査の実施

 被災地に新規供給された民間住宅(持家・借家)の全てが、震災の被災者によって利用されているとは限らない。現実には、被災地区外の一般需要者が入居している場合、あるいは新規供給されたものの、未入居状態の住宅も相当数に上っていると見られる。

 新規供給された住宅のうち、被災者の入居率(ガバリッジ)を把握することが、震災復興としての住宅供給の達成率の正確な把握につながることになる。

4.被災借家居住者の住宅復興過程の追跡調査の実施

 応急避難居住先としての仮設住住宅には、結果的には高齢の生活弱者が集中することとなったため、その層に対する恒久住宅として「復興公営住宅」が供給されてきた。しかし、被災者の中の相当数を占めたはずのファミリー層の借家居住者は、公的住宅の支援からも自力復興の網からも抜け落ちた存在となっているケースが多い.。

 借家居住の被災者の住宅復興の過程を明かにしておくことは、大都市型巨大地震後の住宅復興政策を策定する上で重要な要素となると思われる。

5.復興公営住宅等入居者の恒久的生活再建の支援策の策定

 復興公営住宅を中心とする公的借家入居者には、生活弱者や高齢世帯が多く見られる。新たな住宅への入居で、住宅の物理的条件の改善は実現したものの、従前居住地との隣人関係の断絶や将来の家賃負担増の不安など、生活条件については以前より悪化していると評価している被災者が多い。

 生活支援策の一層の充実と多様化の方策を、今後積極的に取り組むことが必要である。

6.自力復興被災者への住宅再建補修のための経済的支援策の策定

 自宅の全壊認定を受けて住宅再建を強いられた被災者には、所得の低い人達も多く存在している。また、補修で対応した被災者にも同じことが指摘できる。

 住宅復興によって経済的基盤がいっそう脆弱になった自力復興世帯に対する、経済的支援(建設資金の補助の拡大と金利の利子補給)制度の確立が急がれる。

7.被災住宅の耐震・安全点検の実施補修支援策の策定

 自力復興被災者のうち被災住宅を補修で対応した世帯にとって、住まいの耐震性能と安全性の点検は大きな関心事となっている。

 自治体にとって、市民の生命と財産の安全を守ることは最も基本的な責務である。そのため被災住宅ストックの全てに対し、緊急に「耐震・安全診断」を実施し、必要な補修に対しては経済的助成も含めた支援策を確立することが求められる。

8.各種支援制度の効果的な適応のためのコーディネイト体制の確立

 被災者の住宅支援に関わる各種の現行諸制度や震災後に適用・制定された様々な制度が、緊急事態のもとで効果的に機能しなかった面も多い。震災復興時における、このような混乱を回避するために諸制度の有機的かつ効果的な活用を促進するためのコーディネイト体制を確立しておくことは、住宅復興支援施策の効果を最大に発揮する上で不可欠な課題となっている。

9.全半壊認定(罹災証明)のあり方についての検証

 震災直後の二次災害回避のために実施された緊急避難のための「全半壊認定」は、結果として被災者の住宅の復興のあり方を決定づけることとなった。しかし、解体・再建の必要度判定は、専門的かつ客観的に実施する必要があったとみられる。

 「全壊認定→公費解体→新規建設」という短絡的な対応が、被災者の経済的負担を必要以上に増幅させたと言えるため、全半壊認定の扱いについてついての再考が求められる。

10.住宅政策から「居住政策」への住宅政策の転換

 巨大地震の発生の緊急時には、多くの課題を含みつつ施策が展開せざるを得ないことは当然であるが、同時に平時における政策の貧困が、緊急時の対応能力に致命的欠陥となって顕在化することも確かである。

 わが国の従来の住宅政策における箱物主義・自助主義の原則は、仮設住宅供給や復興住宅供給におけるミスマッチの最大の原因となった。震災復興としての住宅再建では、住まいを「生活の器」あるいは「基本的人権」の一部と位置付け、“就労・福祉・医療・コミュニティ"等の生活を支える諸条件の整備と一体的に展開できる「居住政策」としての確立が求められる。特に、生活基盤を破壊された被災地では、その政策理念を欠如した住宅復興対策には大きな限界がある。

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2005,7, 3
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